愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「すみません、遅くなりまして。」

 そう言って入ってきた祐一のお父様。続いて、高そうな着物を着たお母様が、祐一と共にペコリと会釈をしながら入ってきた。


 思わず慌てて立ち上がった私たちは、急に走った緊張感で、体がカチコチに固まっていた。

「とんでもない!お忙しい中、お時間を作っていただいて。」

「こちらこそ、わざわざ遠いところを。さっ、座りましょう。」

 そうして、お互いの父が挨拶を交わした。


 1時間ほどが経ち、祐一のご両親が主導でやっとみんなが打ち明けてきた頃。

「そういえば、詩音さんとお二人は、血が繋がっていないとか。」

 突然、お父様がそう切り出し、変な空気が流れた。

「ちょ、父さん。急に失礼だろ。すみません。」

 慌てて、フォローを入れる祐一。私たちの様子を伺いながら、気まずそうにそう言った。


「あ、私から言ったの。隠すことでもないから。」

 そんな状況に、慌てて私もフォローを入れると、母達は顔を見合わせ笑顔を作った。


 私は、今ここにいる両親と血の繋がりがない。本当の父は交通事故で私が生まれる前に他界し、私を産んでくれた母も、5歳の時に病気で亡くなってしまった。

 まだ小さかった私は、ほとんど母の顔など覚えていない。でも、寂しくはなかった。

 母の親友だった今のお母さんが引き取ってくれて、蕪木家の養子に入り、本当の親のように育ててくれたから。


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