愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 いつものことながら、湊さんとそんな冗談まじりの会話を交わしていると、割って入ってきた須崎くん。

「はいはい、兄貴との会話はいいから。てか、用意できてんの?」

 そして、湊さんを見て謎の会話を交わした。

「できてるよ、ごゆっくりー。」

 笑顔は営業スマイルに変わり、カウンターの中から奥の席へ促すように手を向けた。


 私は須崎くんに押されて、そのまま奥の個室に通されると、存分に飾られた装飾を目の当たりにして目を疑った。そしてテーブルには、『予約席』の文字。

 私は目を泳がせながら、いつもと違う雰囲気に戸惑った。


「え.....、何これ。わざわざ予約までして。」

 いつもは空いている席に適当に座り、予約なんてしたことなかったのに――

 思わずそう声をもらすと、ニヤリと笑うひな子。

「はいはーい、主役はこっち来て!」

 そして手を引かれ、状況が把握できないまま、真ん中の席に座らされた。

「主役って?なんのこと?....え、主役?」

 戸惑いながらキョロキョロとしていると、自然と運ばれてきた赤ワイン。それを手渡されると、3人が笑顔でこちらを見た。困惑した顔でみんなを見渡すと、示し合わせたようにワインを前に付き出し、叫んだ。


「「詩音(蕪木)、婚約おめでと〜!!!!」」


< 15 / 219 >

この作品をシェア

pagetop