愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「祐一には、言うつもりない。言ったところで、私たちの関係が戻るわけでもないし。」
あれから、祐一とは一度も会っていない。携帯には毎日のように電話がかかってくるけど、出る気にはなれなかった。
「じゃあ、せめて母親には言った方がいい。どっちにしろ、初めての子育てを一人でなんてできないだろ。」
「んーーー、そんなの言えないよ....。」
ふと、祐一の家族と顔合わせをした日のことを思い出した。頭に浮かぶのは、両親の嬉しそうな笑顔。
「祐一とのこと、本当に喜んでくれてた。安心したって....。今まで、私のこと引き取って育ててくれて、恩返ししなきゃいけないところなのに、困らせたくない。」
半泣きになりながら、心からそう思った。
「そんなこと言ったって、永遠に黙ってることはできないだろ。」
「うん....」
そんなことは分かっている。でも、祐一とダメになったことを知ったら、がっかりするだろう二人の顔は想像がついて、言い出せなかった。
「はぁ.....。だから、俺と結婚すればいいって言ってるのに。」
「え?」
「俺は、あいつとの子供だろうと、自分の子供として育てられる自信はある。詩音がそばにいてくれるなら、俺はそれ以上のことないから。」
彼の顔は、真剣そのもの。何を言い出すかと思えば、もはや呆気だった。