愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「あの、正気ですか?」

 つい、信じられずにそう言ってしまった。

 到底信じがたい言葉の数々。妊娠して、私の耳がおかしくなっているんじゃないかと思うくらいに、成宮さんの発言はおかしかった。

「うん。いたって真面目に言ってる。」

 しかし、表現一つ変えない彼に、私はもう開いた口が塞がらなかった。

「だとしたら、本物のバカですね。」

「は?」

「何でわざわざ厄介な道を進もうとするんですか。成宮さんなら山ほど幸せな結婚があるのに、未婚の子持ちと結婚しようなんてバカな真似、大バカのすることとしか.......」

 こんな言い方しかできず、素直になれない私。彼の優しさに甘えちゃいけないと、突き放そうと必死だった。

 しかし、そんな言葉を遮るようにそっと腕を引き寄せられて、抱きしめてきた成宮さん。気づいた時には、胸の中にすっぽりとおさまっていて、心臓のドキドキが止まらなかった。


「詩音じゃなかったら、こんなこと言わないから。」

 そして、トドメの一言。ズルすぎる。

 私は優しく包み込まれた彼の腕を振り払うことができず、何も言えず.....。そこに収まったまま、しばらく温もりを感じていた。


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