愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 つわりで体調も良くない。それに何か食べると吐いてしまいそうで、仕事中は食事も取る気にもなれない。そうすると、頭が回らない。

 負のループだった。


 その日のお昼休み。私は1人でトイレの化粧台に手をつき、大きくため息をつきながら、鏡に映る自分の顔をじっと見つめる。

「ひどい顔......。」

 思わず、そう声を漏らした。


 ーーピコンッ

 すると、台の上に乗せていた携帯が音を鳴らした。携帯を手に取ると、同期のグループLINEから通知がきていた。

 内容は、同期会の招集。ひな子を筆頭に、ピコピコと反応する同期たち。

 馬鹿みたいにふざけ合う会話を見ながら、自然と笑顔が溢れ、その時ばかりは何もかも忘れることができた。


 『詩音もいけるでしょー?』

 そんな時、反応しない私を気にしてかそう送られてきたひな子の言葉。一気に現実へ引き戻された。


 正直、行きたくて仕方がなかった。

 みんなの顔が見たい。みんなに会いたい。

 そう思いながらも、やはり引っかかるのはこの状況。今のこの状態で、心配をかけずにいられるだろうか。

 もちろんお酒は飲めないし、食事も食べられるか分からない。妊娠のことも、まだ打ち明けられるほど自分の中で受け止めきれていなくて、浮気されたことだってまだ話す気にはなれなかった。


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