愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「なんで....?」

 そんな私に、不思議そうな南。

「成宮さんが詩音を置いてったのも、仕事を選んだだけだったんでしょ?気持ちが離れたわけじゃない。それなら、まだやり直せるよ。」

 説得するかのように、私に寄り添いそう言った。

 きっと、私のことを思って言ってくれているんだろう。何も言わないひな子も、私と目が合うなり何度も頷く。彼女もきっと、南と同じ気持ち。


「でも、そんな簡単な話じゃないの....」

 私は南の言葉を受け止め、お腹にそっと手を当てた。


 きっと妊娠なんてしていなければ、私は彼の優しさを利用して、そのまま都合よくやり直していたかもしれない。

 みんなやっぱり自分が可愛いから、傷つかない方へと行きたがる。私も、本当はそうしたかった。

 彼からプロポーズされた時も、あしらってはいたけど、心底嬉しかった。今の私には、願ってもない話だとも思った。でも、この子がいる。そう思い、踏みとどまった。


 あんなに優しい成宮さんを、私のわがままで道連れにできない。彼には、絶対素敵な人が現れるから。もっと普通の幸せがあると思うから。

 私なんかより、彼を幸せにしてくれる人と.....


「そっか。」

 そう思いながら俯いていると、私を見て何かを感じたのか、南はそう言ったっきり何も言わなくなった。









< 178 / 219 >

この作品をシェア

pagetop