愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「なんで....?」
そんな私に、不思議そうな南。
「成宮さんが詩音を置いてったのも、仕事を選んだだけだったんでしょ?気持ちが離れたわけじゃない。それなら、まだやり直せるよ。」
説得するかのように、私に寄り添いそう言った。
きっと、私のことを思って言ってくれているんだろう。何も言わないひな子も、私と目が合うなり何度も頷く。彼女もきっと、南と同じ気持ち。
「でも、そんな簡単な話じゃないの....」
私は南の言葉を受け止め、お腹にそっと手を当てた。
きっと妊娠なんてしていなければ、私は彼の優しさを利用して、そのまま都合よくやり直していたかもしれない。
みんなやっぱり自分が可愛いから、傷つかない方へと行きたがる。私も、本当はそうしたかった。
彼からプロポーズされた時も、あしらってはいたけど、心底嬉しかった。今の私には、願ってもない話だとも思った。でも、この子がいる。そう思い、踏みとどまった。
あんなに優しい成宮さんを、私のわがままで道連れにできない。彼には、絶対素敵な人が現れるから。もっと普通の幸せがあると思うから。
私なんかより、彼を幸せにしてくれる人と.....
「そっか。」
そう思いながら俯いていると、私を見て何かを感じたのか、南はそう言ったっきり何も言わなくなった。