愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「詩音。何かあったら呼んで。隣の部屋にいるから。」
「うん。ありがとう。」
私はソファに座りながら、部屋を出ようとする成宮さんにぎこちない笑みを見せた。
彼が出ていき扉が閉まると、しーんと静まり返るリビング。
「詩音、会ってくれてありがとう。嬉しいよ。」
この瞬間、私は祐一と二人っきりになった。
あれから成宮さんに説得され、仕方なく祐一と会うことに決めた私。しかし、無理やり笑顔を浮かべる彼が、様子を伺うように恐る恐る近づいてくる姿に、耐えきれなかった。
「別にっ.....会いたかったわけじゃない。ただ、成宮さんに言われたから。」
私は小刻みに震える手を押さえながら、彼の動きを止めるように大きな声を出した。
「そっか......」
少しの沈黙の後、気になって顔を上げると立ち尽くす彼と視線が交わった。それは、少し前まで毎日のように見ていた顔。
あんなにも見慣れていたはずだったのに、今では目があっただけで緊張している自分がいた。
「会社、来てたんだってね。」
思わず目を逸らし、話題も逸らした。
そして、ついさっき成宮さんから聞いたばかりの真実を確かめるかのように、そう口を開く。
数十分前。成宮さんに聞かされた。祐一は、私の知らない間に、もう何度も会社に会いに来ていたということを。