愛を孕む~御曹司の迸る激情~
私は全く気づかず、そんなことがあったなんて知る由もなかった。廃人状態だった私に会わせられるわけがないと、成宮さんが毎回のように追い返していたというのだから。
「うん。」
すると、小さな声を出し、祐一は近くの椅子を引いてそこに座った。
「彼に言われたよ。どの面下げて会いにきたんだって。.....まあ、本当にその通りだよな。」
分かりやすく頭を抱えながら、そう言う祐一。正直、頭を抱えたいのはこっちだった。
「成宮さんから全部聞いたよ。」
それでも私は知りたくて、話を続けた。
「どうして、あの女の人に頼んだの?」
うな垂れる彼をボーッと見つめながら、成宮さんから聞いた言葉の一つ一つを思い返していた。祐一が今回、どうやってこの場所を聞きつけ、会いにきたのかを。
『死ぬほど頭下げて、姉貴に頼み込んだって聞いた』
『詩音と会いたいから、俺と連絡をとらせてくれって』
『きっと、プライドはズタズタだろうな』
『姉貴に頼むことになるくらい、切羽詰まってた』
『これがどういう意味か分かる?』
『あいつは、姉貴より詩音を選んだ』
『なりふり構っていられないほど、詩音が大事ってことだよ』
頭の中で繰り返される言葉たち。聞いた時は、想像もつかない祐一の行動に戸惑いを隠せなかった。