愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「詩音。」
すると、突然真面目な顔をして私の名前を呼んだ彼。
「本当にごめんっ。」
唐突にそう頭を下げた。あまりにも急すぎる展開に、私は戸惑いを隠せなかった。
「なに、急に.....」
そして不気味なものを見るかのように、ソファに座りながら少しだけ後ずさる。
「いや、まだちゃんと謝ってなかったから。詩音を傷つけたこと。今日一番に言わなきゃいけないはずだったのに、何から話せばいいか分からなくなって。ごめん.....」
そう言って、また頭を下げた。
この時。私はあの光景が全て、現実だったことを痛感した。
きっと心のどこかで、まだ希望を捨てきれていなかったんだと思う。実は、私の知らない深いわけがあって、祐一が浮気なんかするはずないと。仕方なく、あの場にいたんだと。
あそこまで見ても尚、馬鹿な期待を持っていた私は、自分で自分が情けなくなった。
ずっと、彼から何か言葉を聞くのを避けて、逃げて....。電話をずっと無視していたのも、あの状況を認められるのが怖かったから。現実を受け入れるのが怖かったからだ。