愛を孕む~御曹司の迸る激情~
それから、母親の顔になっていた百合を受け入れ、昔の彼女とは違うのだと信じ、もう一度やり直すことに決めた。
本気で両親にも相談し、自分の子供として育てたいと、百合と結婚したいとそう告げた。
しかし、血のつながらない子供を引き取ることは、高瀬家の跡継ぎとしては許されず、猛反対。
俺たちには、駆け落ちするしか選択肢はなかった。それほどまでに悩み、百合との未来を考えていた。
そんな矢先のこと。また突然現れたかと思うと、子供の本当の父親と結婚すると言ってきた。
結婚できない俺が言うのもなんだけど、本気で百合のことを考えていたこっちからすれば、彼女の気持ちが分からなくなった。
とことん振り回され、人間不信にもなりかけた。女性が怖い生き物にも思えた。
もう恋愛なんてしない、できないだろうと自暴自棄にすらなっていた。そうして1年が過ぎた頃だった。
蕪木 詩音と出会ったのは。
営業回りをしながらたまたま見かけたのが、最初。きっと彼女は、あの倉庫の前で出会ったのが初めてだと思っているだろうけど、俺は一方的に知っていた。
まだ入社したばかりで初々しいスーツ姿の詩音。その時、彼女は研修を受けている大勢の中の一人だった。
でも、なぜか彼女にだけ目がいった。
なぜか、彼女を見ている俺がいた。