愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「詩音、どうかした?」

 すると、ボーッとしていた私の様子に気付き、南が心配そうに私を見た。こういう些細なところに南はよく気付く。

「あ、ごめんごめん。祐一、今日帰ってこないらしくて。私が同期会行くって言ったら、友達と飲みに行くって。朝まで飲み明かしたいみたい。」

 私が笑いながらそう言うと、一番に反応したひな子。

「えー、それって本当に友達かー?」

 酔っ払ってふざけたように言うひな子の言葉に、ドクンと心臓が脈打つのを感じた。


「おい、お前飲み過ぎだぞ。」

 私の強張る顔を見て何か思ったのか、須崎くんが慌ててひな子のお酒を遠ざけた。


「あー、待って待って待って!!」

 すると、自分のお酒を取り返すかのようにグラスを引き寄せると、ひな子はとろんとした目で頬杖をつきながら私を見た。

「冗談だよー!祐一さんが浮気なんてあり得ないもんねー。あんな真面目な人いないもん!」

 そう言って、ニッコリ笑った。ひな子の言葉に悪意がないのは、この3年ほどの付き合いで分かっていた。だけど、最近は結婚前で不安定になっていて、その言葉は少しきつかった。


「結婚したら、朝帰りってわけには行かないもんねー。今のうちに遊んどいてもらった方がいいよ!」

「うん、そうだね。」

 私は笑顔を作りながら、残っていたカクテルを一気に飲み干した。

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