愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「本当にごめんなさい。」
そして、続いた沈黙。何も言わない須崎くんの代わりに、静けさに耐えられなくなった私が、間を埋めるようにそう言う。
沈黙の時間が長くなればなるほど、なんとなく私たちの仲も遠くなっていく気がしたから。
「はーあ、仕方ないよなー。」
そうして、しばらくしてからようやく声を出した須崎くん。
「一応、覚悟してたつもりだったんだけど、やっぱくるわ。」
「あの.....」
「何も言わないで。色々大変な時に、困らせてごめん。悩ませてごめんな。」
私は、大きく首を横に振り、ジッと彼の瞳を見つめた。
「好きになってくれて、ありがとう。」
精一杯の笑顔を向けて、そう言う。すると、須崎くんからも笑顔をもらった。
「こちらこそ、ちゃんと考えてくれてありがと。」
私たちは、それから他愛もない話をした。
車に乗り込み海沿いを走りながら、きっと最後になるだろう二人っきりのドライブを楽しんだ。そうして、マンションまで送り届けてくれた。
その間、私に気を遣わせないようにと、必死にいつもの空気を作ってくれた須崎くん。私も、出来る限り彼の作る空気に応えた。
本当に、私にはもったいない人。きっと、彼には私なんかよりももっと相応しい人がいる。彼を幸せにしてくれる人が、きっと現れる。幸せになってほしい。
心の底からそう感じながら、私たちはまた友人としていつものように笑い合った。