愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「何してんの?」

 その日。海から帰ってきた私は、床に座り込み、大きなボストンバッグに荷物を詰めていた。

「詩音.....?」

 部屋の扉が開く音がしたかと思うと、成宮さんの疑うような声とともに、足音が近づいてくる。それでも、私は背を向けたまま黙々と続けた。

 彼に腕を掴まれ、手を止められるまでは。


「なあ、何してんのって。」

「ごめんなさい。」

「ごめんじゃなくて、何してるか聞いてるんだけど。」

 私はそのままゆっくりと腕を引かれ、立ち上がらせられると、ベッドに座るよう促された。

「出てくの?」

 目の前にしゃがみ、やけに優しい口調になる彼。その顔を見たら、なかなか言葉が出てこなかった。


 私は目も合わせずに俯きながら、ゆっくりと頷く。すると、成宮さんは大きくため息をついた。

「高瀬のとこか。」

 その言葉にビクッと反応した。でも、それは違う。何も言わずに首を横に振り、彼の目を見た。

「祐一のところには行かない。やり直すつもりなんてないの。」

 はっきりとそう告げた。


 成宮さんと話し、須崎くんと話し、そして祐一と話し、答えは決まった。もう迷わない。

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