愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「ふぅ.....。」
冷たい麦茶を手に、キッチン台へ寄りかかりながら、ゴクリと喉を鳴らした。広い広いこの家の中で、この場所、この瞬間が一番落ち着く。
大手飲料メーカーの広報課で働く私は、今年で入社四年目。こんな頼りない私のことを慕ってくれる後輩がいて、上司や先輩たちとの関係も良好。同棲中の彼からは三ヶ月前にプロポーズをされ、仕事もプライベートも全て順調だった。
それなのに、最近は何かモヤモヤと心の中で引っかかって、自分でもその異変には気づいていた。でも、それが何かは分からなくて.....。これがマリッジブルーってやつなのか、とそう思っていた。
「しーおん。」
「わっ、ビックリしたー。」
朝ごはんを作ろうとフライパンに手をかけた時、腰のあたりに腕を回され、抱きついてきた彼。
「朝起きたら詩音、いなかった。」
「あ、ごめん。気持ちよさそうに寝てたから、起こすのかわいそうかなって思って。」
「いいのに、そんなの。」
彼は、高瀬 祐一。二年近く付き合っている、四歳年上の私の婚約者だ。