愛を孕む~御曹司の迸る激情~
それから1ヶ月後、私は4年間勤めた会社を退職した。
まだ少しだけ残っていた広報の仕事は、紗和ちゃんが全て引き受けてくれて、頼もしい後輩のおかげで本当に助かった。
そして、新規事業の案件も私の仕事自体はほとんど残っていなくて、成宮さんの助けもあり、順調に引き継ぎを終えた。
成宮さんの家を出てしばらくは、ホテル暮らし。東北に帰ると決まっていると、今更家を借りることもできず、仕方なく安いホテルに泊まっていた。
そんな時、私にも女神がいた。
一人暮らしをしている南が、「うちにおいで」と声をかけてくれたから。
初めは、妊婦で何かと迷惑をかけると遠慮していたけど、最終的には彼女の優しさに甘え、数週間居候させてもらうことにした。
結局。それを聞きつけたひな子までも彼女の家に居座り、なんだか学生時代に戻ったような修学旅行状態だった。
そうしてトラブルもなく妊娠13週を迎え、私が東北に帰る日がやってきた。
「ごめんね、みんな忙しいのに来てくれて。本当ありがとう。」
東京駅の改札前。同期のみんなが見送りに来てくれた。ひな子、南、須崎くん、雪哉。
みんなの顔を一人一人見つめながら、グッと寂しさがこみ上げてきた。