愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 あの会社に就職して良かったこと。それは、同期に恵まれたことだった。

 成宮さんを追うように就職したものの、私たちはすぐに別れ、あの頃は凄く落ち込んでいた。

 でも、成宮さんと付き合っていなければ、この会社には入らなかっただろうし、みんなにも出会うことはなかった。そう思うと、感謝でしかないと今なら思える。


 新幹線が来るまでの時間は楽しくて、あっという間に過ぎていった。

「じゃあ、そろそろかな。」

 そして、とうとう出発の時。時計を見ながらそう言うと、みんなは笑顔で頷いた。

「しおーん、元気な赤ちゃん産んでねー。」

「ありがとー、ひな子。」

 そして、抱きついてきた彼女。すかさず飛んできた南も重なって、そんな二人にギュッと抱きしめられると、じんわり涙が浮かんだ。


「ま、永遠の別れってわけでもないしな。落ち着いたら、俺らが会いにいくよ。」

 すると、そんな空気を吹き飛ばすかのように、あっけらかんとそう言う須崎くん。思わず、二人と顔を見合わせ笑ってしまった。


「それ良い考え!須崎、たまには良いこと言うじゃーん。」

「いや、"たまには"余計だわ。」


 ひな子と須崎くんのそんなやり取り。見慣れていたはずの光景が、もう見られなくなると思うと、どうしようもなく寂しくなった。

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