愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「じゃあ、みんなまたね!」

 私はスーツケースを手に、思いっきりの笑顔を向けた。みんなと顔を見合わせ手を振ると、そのまま改札に入ろうとした。

「詩音っ!」

 その時、後ろからひな子に呼び止められた。

「ん?」

「これ。あの、あとで、新幹線の中で見て?」

 そう言って、なぜか押し付けてくる紙袋。

「ありがとう....?」

 それを半信半疑で受け取りながら、ぎこちない笑みを作るひな子を見て頷いた。それから、みんなとはまた手を振って別れた。


 色んなことがあった東京。母との数少ない思い出もここだった。成宮さんや祐一との生活も、同期のみんなとの思い出もここ。

 思い返せば、この土地から出たことは一度もなかった。

 そんな私は今日、新たに生まれてくる命と共に、新たな土地でスタートを切る。


 動き出した新幹線の中、窓からボーッと過ぎ去っていく景色を眺めた。だんだんと移りゆく街並みに目を向けながら、動かした手に紙袋があたった。

「そうだ.....」

 ひな子から渡されたものを思い出し、袋を開けた。まず、目に入ってきたのは二つ折りになった一枚の紙。

「手紙.....?」

 ゆっくりと開いてみると、そこには見たことのある綺麗な字で、想いが綴られていた。

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