愛を孕む~御曹司の迸る激情~
時計の針は12時を回り、閉店後のお店の中には私たちだけが残っていた。
「この子、もう終電ないんじゃなかったっけ。」
ひな子を心配そうに見つめ、そう言う南。
「うん、たしかもうない。」
須崎くんも、少しずつワインに口をつけながら、頬杖をつきそう言った。そんな心配をされているなんて思ってもいない本人は、私たちの中で一番家が遠いのに、気持ちよさそうに机に突っ伏して眠っていた。
「それにしても、南は本当に変わらないよね。お酒つよー。」
「そうかな?実はそんなに飲んでないからじゃない?」
「え、そうなの??」
こうなったひな子はどうやっても起きないから、私は南と話しながら、しっぽりとワインを飲んでいた。
「詩音、時間は大丈夫?」
「私?私はもう、祐一も帰ってこないし、自由気ままです。」
元々地方に住んでいた南は、隣の駅で一人暮らしをしている。だからタクシーでもワンメーターで帰れるし、最悪歩いても帰れるから、一人余裕だった。
一方の私は、もう何時に帰ったって誰もいない家。特に気にすることはなかった。
「須崎くんは?終電何時だっけ?」
「俺はー、あっ、今行ったわ。」
「え。」
彼は目を細めながら携帯で時間を見て、ハッとしたようにそう言った。