愛を孕む~御曹司の迸る激情~
そんなこんなで終電を逃した2人。ひな子をやっとの思いで起こして、私たちは外へ出た。
「風、気持ちー!!!」
南に支えられながら、楽しそうにそう叫ぶひな子。
「それ、連れて帰れそう....?」
必死そうな南を見て、おろおろと助けたそうに手を出しながら須崎くんが言った。
「うん、大丈夫。タクシー拾って帰るよ。」
終電がなくなると、南の家に泊まることが多いひな子。背もこの中で一番低く小柄だから、支えるのはそんなに大変ではない。だけど棒のように細い南が、まっすぐ歩ける様子のないひな子を、1人で連れて帰れるか心配だった。
そして、なんとか大通りに出て二人をタクシーにのせると、私と須崎くんだけが残った。
「蕪木は?まだ電車あんの?」
「あ、うん!私の終電1時だから、大丈夫。」
私も比較的近いところに住んでいて、駅で数えたら5駅先。電車は一本で帰れるから、すごく便利なところ。
「そっか。じゃあ、駅まで送ってくよ。」
「須崎くんは?どうやって帰るの?」
「ああ、俺は兄貴のとこ行くから大丈夫。この辺住んでるから、あとで店寄って一緒に帰るよ。」
須崎くんはそう言って、さっきみんなからもらったプレゼントの袋を、何も言わずに私の手から取って歩き出した。
「あっ、ありがとう。」
彼は、自然とそういうことができる人。私は思わず、その不意打ちにキュンとさせられた。