愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「ねー、どういうこと!」
「いーのいーの。気にすんなー。」
振り返りもせず、ひらひらと手を振りながら一人だけ満足そうに歩く彼。私はそうして歩く様子を見て、よく分からずにむくれながら、足早に追いかけた。
「もー、酔っ払ってるからって適当に誤魔化したでしょー。」
「そんなことないよ。単純に、同期が幸せでよかったなーって話。」
須崎くんは携帯をいじりながら、心のこもっていないそんな言葉を並べた。私は思わずムッとして、言い返してやろうと思った。
「須崎くんね。そうやって友達の幸せばっか願ってると、自分の幸せなんて遠くとおーくに行っちゃうんだからね。」
言ってやったと思いながら、私は勝手に満足げだった。
すると、その時。
――グイッ
「ほら、危ない。チャリ来てるから。」
須崎くんに吸い寄せられるように腕を引かれ、彼の胸のギリギリの辺りで立ち尽くした。
「蕪木??」
「あ、えっと、チャリ.......ね。」
私は咄嗟に乱れた髪を耳にかけ、慌てて須崎くんから一歩離れた。
今のはずるい。少し....いや、かなりずるい。
私はどこを見ていいか分からなくなりながら、とりあえず歩き出す。そして胸に手を当てながら、息を吐いた。
想定外だった。まさか須崎くんに、ドキドキするなんて――