愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「香水....は?」

「それも事故みたいなもんで、その子が持ってた香水の瓶が倒れて、ちょっとかかったんだ。部屋中その匂いだったから、帰ってきてまで匂いがしてるの分からなくて。詩音に気づかれてたなんて、思ってもみなかった。」


 あまりにも流暢にそう話すから、これが作り話だなんて到底思えなかった。それに、もしこれが作り話だとしたら、上手すぎて......。

 結婚の話さえ信じられなくなってしまいそうで、怖かった――


「もし、信じきれてないなら、あの時いたやつに電話して聞いてもいい。今は遅いから、起きてすぐにでも。」

「ううん、そこまでしなくていい。」

 私は携帯を持つ彼の手を掴み、首を横に振った。

「ごめんね、疑ったりして。結婚前で、マリッジブルーになってるのかな。最近おかしくて。」

 私は、そう言って笑った。


 このことは、もう終わらせよう。彼の必死さを見ていたら、これ以上突き詰める気にもならなかった。

 私は残りのココアを飲み干すと、立ち上がりベッドに向かった。

「おやすみ。」

 きっと、私の思い過ごしだ。










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