愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「ご無沙汰しております。」
私は声を震わせながら、ゆっくりと顔を上げた。
目の前には、黒いスーツに青いネクタイでビシッと決めた――祐一のお父様が立っていた。
還暦を迎えているとは到底思えない若さで、現役バリバリに高瀬グループを動かしている。
「元気にしていたかね。」
「はい。」
結婚が決まりご挨拶をさせてもらってから、何度かご自宅に招かれ、お食事をしたことがある。でも、2人で会う、こんな状況は初めてのこと。
なぜ、うちの会社へ....、そしてなぜ広報課へ....
私は心の準備も出来ないまま、混乱と緊張でどうにかなりそうだった。
「祐一とは、順調かな。」
私はみんなの視線もあり、場所を会議室に変えた。
「あの、失礼ですが。どうして、わざわざ.....」
「ちょっとした仕事があって。部下に来させても良かったんだが、あなたの顔が見たいと急に思いたってね。」
その言葉を聞いた瞬間、突然緊張が走った。わざわざ部下の人に任せられる仕事を、私に会うために自らやりにきた。
以前会った時は彼を通して話していたから、ここまで緊張することはなかったけど。今日は、2人っきり。その空間に圧倒され、どこか落ち着かなかった。