愛を孕む~御曹司の迸る激情~
すると、お父様は静かに話し始めた。
「欲を言うとね。仕事をやめて、家に入って、祐一を支えてほしいと思ってるんだ。でももし、仕事を続けたいと言うなら無理強いはしない。ただ、できることなら、うちの会社に入って、できるだけ祐一の側にいてやってほしいと思ってる。」
この時、父親としての本音を聞いた気がした。
相応しくないという烙印をおされるかと、ヒヤヒヤしていた私は、思わぬ肯定的な言葉にホッと胸を撫で下ろした。
「反対されるかと思ったかい?」
「あ、はい.....。」
私は、恥ずかしながら正直にそう答えた。
すると、にこやかな笑顔を見せる高瀬社長。
「そんなに緊張しなくていいんだよ。私も妻も、あなたみたいに美人な娘ができることを喜んでるんだ。」
私は思ってもみなかった歓迎に、正直驚いていた。でもそれと同時に、嬉しくもあった。
「じゃあ詩音さん、さっきの話考えてくれたまえ。」
「はい。」
「あと、妻も手料理を振る舞いたがっている。たまには、うちにも顔を見せなさい。歓迎するよ。」
お父様はそう言って会議室を出た。私はその後ろ姿に頭を下げながら、扉が閉まるのを待つ。
そして扉が閉まると、部屋は一気に静まり返り、力が抜けたように私はヘナヘナと地べたに座り込んだ。