愛を孕む~御曹司の迸る激情~
それから何日経っても、会社では私に対する噂が収まることはなかった。むしろ話題の真っ只中に来た祐一のおかげで、その噂は大きくなる一方だった。
「なんか、どんどん話が大きくなってきちゃいましたね。」
コピー機の前に立つ私に、こっそりと近づいてきてそう言う紗和ちゃん。私はため息をつきながら、持っていた資料をパラパラとめくった。
「でもその分、今まで声かけてきた人はぱったりいなくなったけどね。いいんだが悪いんだか。とにかく視線ばっか感じて、やりづらくてしょうがない。」
「まあ、話題が蕪木さんってだけでもみんな食いつくのに、まさか婚約してて、その上相手はビッグネームって。そりゃそうなりますよね。」
そう言う紗和ちゃんに資料を渡しながら、私は自分の席についた。
「しかも、いまやその高瀬グループの担当は私。こうなると嫌だから、指輪だって仕事中はしてなかったのに。」
私は頭を抱えながら、またため息をついた。
周りの席のみんなは課長のデスクに集まって、新商品のプレスリリースの打ち合わせ。私たちはデスクで静かに資料作成をしていると、何やらジッと紗和ちゃんが見つめてきた。
「なに?」
「蕪木さんって、高瀬グループの担当になったの去年ですよね?その前から付き合ってたってことは、何きっかけだったんですか?」
突然そんなことを言った。