愛を孕む~御曹司の迸る激情~
_百合の花
本格的な暑さが増してきた、8月のある日曜日。朝ベッドから起きると、また隣に祐一がいないことがあった。寝室を出てリビングに行くと、ソファに座ってぐったりとうなだれている後ろ姿が見えた。
「おはよう。どうしたの?」
「ああ、おはよう。ごめん、ちょっと疲れてて。」
そう言った彼は、ひどく疲れた顔をしていた。
昨日夕食を食べた後、誰かからの電話を受け、急いで出かけていった彼。先に寝てていいと言われたけれど、私はしばらく起きて待っていた。でも、2時を過ぎても帰ってこず、結局寝落ちしてしまっていた。
「昨日、遅かったの?私、祐一が帰ってくる前に寝ちゃって。」
ソファにゆっくり腰掛けながら、私はそう尋ねた。すると、彼の顔が一瞬固まったような気がした。
私は首を傾げると、
「うん、ちょっとね。」
少し間があいて、そう言葉を濁して笑った。
私は曖昧に答える祐一に、少し違和感を感じた。そんな私の気持ちを察したのか、急に弁解を始める彼。
「昨日さ、後輩から仕事のことで悩んでるって電話きて。もう行ったら、愚痴のオンパレードだったよ。」
そう言った。
私はこういう時に働く"女の勘"を、少し恨んだ。気づきたくもない嘘に、気づいてしまった気がしたから。