愛を孕む~御曹司の迸る激情~
第1章
_素敵な婚約者
「蕪木さん、ランチ行きませんかー?」
「あっ、うん!行く!」
向かいの席に座っている1つ下の後輩――紗和ちゃんが、12時の鐘と共にパソコンを閉じ、立ち上がった。
「でも今日珍しかったですね〜。蕪木さんが遅刻ギリギリなんて。いつも超余裕持ってくるのに。」
財布と携帯片手に会社のビルを出た私たちは、近くの『farfalla(ファルファーラ)』という行きつけのイタリアンレストランにきていた。そして、いつものテラス席に通されると、紗和ちゃんが思い出したようにそう言った。
「あー、ちょっと今日は朝からバタバタしてて。」
今朝もまた祐一のペースにのせられて、危うく遅刻するところだった。私は彼との朝を思い浮かべながら、苦笑いでそう言った。
すると、ニコニコと怪しげに私を見つめる紗和ちゃん。
「えー、もしかして、彼氏さんとイチャイチャしてたからじゃないですかー?蕪木さん、もうすぐ結婚するからってもー。」
「ちょっと違うってー。」
無邪気に私をからかう彼女とは、新入社員として広報課に配属になった時から仲が良く、私にできた初めての後輩。そして、私が婚約していることを知る数少ない人物でもあった。