愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「ご両親に恥ずかしくないように、苦労してお店まで決めて、予約だってしてあるのに。」
「うん。ごめん。」
「私の家族も、このために飛行機のチケットまでとってるんだよ?」
「ごめん。最近忙しくて、すっかり抜けてた。その、大事なことなのに。」
彼は、ただひたすら私の手を握って謝った。でも私にはとっても大事なことだったから、すごくショックだった。
しばらくの沈黙の後、私は大きく深呼吸をして口を開いた。
「いつなら、時間取れそう?」
やっとの思いで絞り出した言葉。彼は一瞬考えた後、小さな声で言った。
「聞いてみる。ちゃんと調整するから。」
私は、その言葉に静かに頷いた。
もう何が本当で何がウソなのか、私には分からない。何を信じるのが正解なのかも分からない。でも一つだけ言えることは、この2年間で彼と作り上げた信頼関係を信じるしかないということ。
「分かった。でも、これで結婚も先延ばしだね。」
私はそう言って作り笑いを浮かべると、寝室に戻った。布団に潜り込み、ただ一点を見つめながら思った。
いつからこんな風になってしまったのか――
私は心の中でそう問いながら、現実から逃げるように目を瞑った。