愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「結婚、ちゃんと考えてくれてたの?」

 思わず、そんな言葉が口から飛び出していた。そして彼は、驚いた顔で私を見る。当たり前だ。結婚自体、不安に思っていたなんて、彼に伝えたことはなかったから。

「当たり前じゃん。俺のプロポーズ、信じてなかった?」

「だって......。」

 私は目の前のことにばかり気を取られて、祐一のことを全然見ていなかった。ちゃんと見ようとしていなかった。こんなに考えてくれていたのを知っていたら、何か変わっていたかもしれない。


「不安だったんだよな、ごめん。でも俺、結婚する気はちゃんとあるから。予定通りにはいかなくなったけど、ご両親に挨拶して入籍して、来年の6月には、式をあげよう。」


 現実的な私たちの未来が、初めて見えた気がした。両家の顔合わせが遅れることで、必然的に入籍だって遠くなるのだと、勝手にそう思っていた。

 でも、彼はちゃんと考えてくれていた。早く顔合わせの席を設けようと、彼なりに考えてくれていた。


「うん、そうしよ?」

 私はそう言って、チャペルの写真をジッと見つめた。

 高校生の頃から大好きだった映画に使われていたチャペル。海がすぐ近くに見えて、すごく綺麗なところ。昔から、結婚式はここでやりたいとずっと思っていた。

 前にテレビでも特集され、その時にぽろっと言った一言まで覚えてくれていたなんて、思ってもいなかった。


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