愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「でもいいな。蕪木さんって、絶対理想の奥さんって感じですよねー。」
テーブルに食事が並び、パスタを頬張っていると、突然そんなことを言い出す紗和ちゃん。思わず、フォークに絡めて食べようとしていたパスタが、スルスルとこぼれ落ちた。
「なに急に。私ズボラだし、理想なんて程遠い気がするけど。」
「うそだー。気配りできるし、後輩の面倒見もいいし、清楚だしー。それに料理も得意なんですよね??.....え、もう女として無敵じゃないですか!」
指を一つずつ折りながら話していた紗和ちゃんは、そう言って顔をしかめる。私はコロコロと変わる表情に驚いていると、また無心でパスタを食べ出す姿を見て、思わずフフッと笑った。
すると、フォークを持つ手を止め、眉間にシワを寄せながら私を見た紗和ちゃん。
「なんですかー。私変なこと言ってないですよー?」
口の中をパンパンにしながら話す様子に、笑みが溢れた。
「ごめんごめん、紗和ちゃん可愛いなーと思って。」
「バカにしてます?それ。」
赤茶色の短い髪を耳にかけ、ムッとしたような表情を見せる。でも、また何食わぬ顔でパスタを食べ始め、なんだか小さな子供見ているみたいだった。
私はにっこりと笑って返すと、またパスタを頬張りながらほっこりとした気持ちになった。