愛を孕む~御曹司の迸る激情~
第2章
_帰ってきたあの人
「えー、今日から営業部に戻ってきてくれた、うちのエース、成宮 蒼くんです。はい、拍手。」
辞令が出た翌月、彼は本当に営業一課に戻ってきた。
紗和ちゃんと一緒に、頼まれた資料を運びながら営業部の横を通ると、ちょうど彼の紹介が行われていた。でも、私は怖くて見ることもできず、足早に通り過ぎようとした。
「あっ、待って、蕪木さん!」
すると、ろくに前も見ずに歩いていたせいで、歩いてくる人に気づかずそのまま誰かとぶつかった。
「すみませんっ。」
私は落ちた資料をかき集めながらそう言うと、目の前にいた人を見て手が止まった。
「なーにやってんだよ。」
「須崎くん。」
ぶつかった相手は、須崎くんだった。ちょうど出社してきた様子の彼は、持っていた鞄を床に置くと、私の落とした資料を拾いながら呆れた表情を浮かべる。
「どうしたの?今、出社?」
「電車止まってた。部長には連絡してあるから大丈夫なの。」
「あ、なるほど。」
その時、営業一課の部屋からは、成宮さんの声が聞こえてきた。
拾ってもらった資料を受け取りながら、須崎くんとの間になんとなく気まずい空気が流れ、さっさとこの場所から離れたいと思った。