愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 その日の夕方、私は成宮さんから連絡を受けた。

 『今日20時、いつもの店で。』

 別れたのが嘘のよう。何事もなかったかのような強引なメッセージ。私は少し苛立ちを覚えながら、既読もつけずに見て見ぬ振りをした。


 仕事を終え、成宮さんの元へは行く気もなく、まっすぐ家に帰った。しかし、家の中は真っ暗。祐一は、まだ帰ってきていなかった。

 カバンを置き、ソファーになだれ込み、そのまま天井を仰ぎながらふと思い出す。元々、顔合わせを予定していたあの日曜日のこと。


 祐一は出張だと、土曜日から出かけて行った。

 でも、正直怪しかった。お父様の仕事の同行だと言っていたけれど、いつもなら会社から迎えがくるはずが、その日は車のキーを持って自分で運転していったから。


 また、女の勘が働いてしまった気がした――。

 本当に、出張なのか。考えれば考えるほど、怪しく見えてきてしまう。でも日曜の夜、祐一はいつも通りに帰ってきて、怪しいところは見当たらなかった。

 私の単なる思い過ごしだったのかと、また想像は堂々巡り。

 このままいくと、何もないことまで怪しく勘ぐってしまうかもしれない。悪い方にしか進まないかもしれない。突然怖くなり、考えるのをやめにした。


 ふぅっとため息をつくと、私は重い体をゆっくりと起こした。思い立ったかのように鏡に向かい、化粧を直し、服も着替えた。

 今は何か、違うことを考えたい。

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