愛を孕む~御曹司の迸る激情~
電車に乗り、揺られること20分。ある駅で降りると、懐かしい景色を見た。慣れた道のりを歩きながら、賑わう歓楽街の中を通り、着いた場所。
ここに入るのも、3年ぶりだった。
外観を見上げると、私は大きく息をはき、意を決してお店の扉を開けた。ジャズが流れる店内。雰囲気のあるバーで、すぐにスタッフの男性が案内してくれた。
そして、通されたのは一番奥のバーカウンター。私たちの、"いつもの席"。そこにはすでに一人の男性が座っていて、スーツ姿の成宮さんがいた。
昔の記憶が頭をよぎりながら、静かに近づいていき、彼の左隣へ静かに座った。
「よっ。」
彼は私に気づくと、持っていたお酒のグラスを軽く持ち上げて言った。
「何にする?」
「じゃあ、ギムレットを。」
私はすぐにそう答えると、成宮さんはくすくすと笑い出した。
「相変わらずそれなんだ。」
そして彼はそう言いながら、バーテンダーの男性に目配せをした。私は少しムッとしながらも、持っていたジャケットを背もたれにかけ、座り直した。
「来ないとは思わなかったんですか?」
私はそんな彼を無視して、意地悪くそう言った。すると、ジッとこちらを見て、にんまりと笑う彼が自信ありげに言った。
「詩音は絶対、来ると思ってたよ。」
ずるいと思った。このタイミングで、昔みたいに名前で呼んでくる成宮さん。
思わず、ドキッとした。