愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「じゃあ、久しぶりの再会に。」

「あ、はい....。」

 お酒が目の前に置かれ、私たちは静かにグラスを合わせた。


 そっとグラスに口をつけ、ギムレットを味わうと、口の中にすーっと懐かしさが広がった。頼んだ瞬間、「相変わらず」と言った成宮さん。でも私は彼と別れて以来、一度も飲んでいなかった。

 彼が初めてバーに連れてきてくれた時、まだお酒を知らない私に教えてくれた思い出のカクテル。だから、これを飲むと彼を思い出してしまいそうで、どうしても飲めなかった。


 私は久しぶりに飲んだその味を噛みしめながら、ジッとカクテルを見つめていた。

「どうした?」

 すると、聞こえてきた声にハッとして、慌ててグラスをコースターの上に置いた。

「ん、いや、なんでも。」

 思わずそう誤魔化しても、まだ彼からの視線を感じる。私はなるべく目を合わせないよう、下を向いていた。

「ふーん。じゃあさ、一個聞いてい?」

「はい?」

「わざわざ着替えてきてくれたの?」

 突然そう言いだす成宮さんに、私は目を見開いた。頬杖をつき、自信に溢れたその顔。なんだか見透かされている気分だった。

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