愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 ランチを終えた私たちは、会社のビルに戻ってきた。

「蕪木さーん!!」

 社員証をかざして中に入ると、途端に吹き抜けの中二階から私を呼ぶ声がした。

「おつかれ〜!」

 顔を上げると、手すりに腕をついて寄りかかり、ヒラヒラと手を振りながら私に笑顔を向けてくる男性がいた。その周りにも何人かいて、誰も彼も見たことのない顔。一瞬、口が開いたまま固まってしまった。

「お疲れ様です。」

 私は誰だろうと思いながらも、とりあえずペコリと頭をさげて、エレベーターホールに向かって歩いた。


「私も蕪木さんみたいに、髪伸ばそうかなー。」

 エレベーターを待っていると、紗和ちゃんが自分の髪をつまみながら、唐突にそう言い出した。

肩にかかるかかからないかくらいの長さで、パーマがかかったショートヘア。私には絶対似合わないけれど、紗和ちゃんには凄く似合っていた。


「伸ばしちゃうの?私、紗和ちゃんのショート好きなのに。」

「え、本当ですかー?まあでも、髪伸ばしたって蕪木さんにはなれないですもんねー。」

「私に?なりたいの?」

 口を尖らせる紗和ちゃんに、私は思わず首を傾げて笑った。

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