愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「会社に行くような格好じゃ、ここには来れなかっただけです。」
口を尖らせてそう言いながらも、正直彼の言っていることは当たっていた。綺麗にして来たかったのは、間違いじゃない。
別れてから3年。大人になった姿を見せたかったから。別れたことを少しでも、後悔させたかったから。選んだ服も、化粧も、アクセサリーも全て、いつもより少し大人っぽくしてみせた。
私はグラスを手に、グッとギムレットを飲み込むと、成宮さんはフッと笑った。
「ごめんごめん。でも、元気そうで良かった。」
そう言って、彼は私の右手にそっと手を乗せた。その瞬間、ビクッと体が反応した。動揺しないはずがない。でも、体が固まって動かなかった。
成宮さんはそんな私の手をギュッと握り、口を開いた。
「あれから、一度も連絡してこなかったね。」
急な言葉に、私は手を握られたまま黙り込んだ。正直、どう答えたらいいか分からなかったから。
「寂しくなかった?」
そして、そう続ける彼の言葉で私はやっと声が出た。
「私の前から何も言わずにいなくなったのは、成宮さんの方じゃないですか。」
彼を見つめ、握られた手をそっとどける。
3年前のことを思い出しながら、まだ成宮さんと付き合っていたあの日の記憶が蘇った。