愛を孕む~御曹司の迸る激情~

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 私が就職して3ヶ月経った頃。

「詩音、結婚しよっか。」

 突然のプロポーズは、成宮さんの家で夕食を食べ終え、テレビを見ていた時だった。

 付き合って4年。ソファに座っていた彼が、後ろから私を抱きしめてきた。驚いて振り返ると、彼の顔はあまりに真剣で、本気なんだと感じた。


 でも、この時の私は、結婚のことなんて全くと言っていいほど考えていなかった。だから、彼がどんな気持ちでプロポーズをしてくれたのかなんて考えもせず、あっさりと断ってしまった。

「まだ、早くないかな...。私、22だし、蒼だって24だよ?もちろん結婚はしたいけど、でも全然先のことだって勝手に思ってたから....。」

 そう言うと、彼はスッと私から離れていった。

「ごめん、ちょっと早まったね。」

 そして、寂しそうに笑った。その瞬間の彼の顔があまりにも印象的で、思わず心がギュッと締め付けられた。


 それから1ヶ月後、彼は私の前から突然いなくなった。転勤するなんて一言も言わず、黙ってロンドンへ発った。

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