愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 私は新しいお酒を頼み、大きく深呼吸すると、彼にずっと聞きたかったことを聞いてみた。

「どうしてあの時、ついてきてほしいって言わなかったんですか。」

「え?」

「結婚しようって言われて、正直驚きました。でも、嬉しかった。あの時、ロンドンに行くことを知ってたら、変わってたんじゃないかって。ついていくことも考えたのにって。成宮さんがいなくなってから、何度もそう思いました。」

 私は目も合わせず、一点を見つめてそう言った。


 どうしてあの時、転勤の話をしてくれなかったのか、ずっと考えていた。彼はいつも、一番大事なことを言ってくれない。一人で答えを出して、相談一つしてくれない。私は、それがずっと寂しかった。


「んー。あの時の俺には、ついてきてくれって言えるほど、自信がなかったんだと思う。」

 すると、語り出した成宮さん。私は、その思いに黙って耳を傾けた。

「詩音もあの時言ったろ?結婚なんて、ずっと先のことだと思ってたって。俺も、なんとなく断られるのは分かってたんだ。でも詩音より仕事を選んだ自分に理由が欲しくて、別れるきっかけが欲しくて。わざと何も言わずに、プロポーズした。」

 成宮さんの弱い部分。自信家の彼が、こんなにも赤裸々に話す姿に、正直驚いた。この3年で何かが変わったのかもしれない。

 昔とは少し違った、人間味のある彼だった。

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