愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 でも、そんなきっかけを探していたことには、正直ショックを受けている自分もいた。

 私はニ杯目のグラスが目の前に置かれると、思わずぐいぐいお酒が進んだ。


「俺はさ、優先順位がどうやっても、恋愛より仕事なんだ。頭の中は仕事のことばっかで、恋愛はおろそかになる。海外で新しい仕事なんて言ったら、尚更だと思った。就職してからの俺を見てた詩音なら分かるだろ?」

 ゆっくりと話し出す彼。私は、その言葉に黙って頷いていた。


 付き合い始めたのは大学の時で、彼はサークルの先輩だった。その頃は毎日のように会っていたし、電話もたくさんしてた。でも、一足先に社会人になった彼は、いつの日か仕事人間になってしまい、私のことはほったらかしになった。

 大学生の時より格段に会う回数も減って、休みの日に一緒にいたってどこか上の空。くるかも分からない連絡を待って、いつも携帯を気にしてた。

 だから、優先順位が仕事にあると聞いても、たしかに驚きはしなかった。


 でも、それでも私は、彼のことが大好きだった。

「私は、それでも待っててって、言って欲しかったよ。仕事か恋愛かなんて、勝手に選んで欲しくなかった。」

 あの時はまだ早いと断ってしまったけど、いずれ結婚したいって、本気でそう思ってた。だんだんと酔いが回ってきて、私は当時の気持ちに戻ったかのように本音をもらした。

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