愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「詩音......。」
彼は私の名前を呼びながら、また手を握ってきた。
本当は拒まなきゃいけない。そう分かっていた。祐一の顔がチラつき、戸惑う。でも、どうしても冷たく振り払うことができなかった。
重なった手の温もりを感じながら、葛藤し、いろんな感情が駆け巡る。
しかし、私はその全てをグッと押し殺した。
「4年間、付き合ってた間は楽しかったです。ありがとうございました。」
今できる精一杯の笑顔を作る。面食らったような表情をする彼は、ゆっくりと私の手を離した。
"別れよう"なんて言葉もなしに、自然消滅状態で別れていた私たち。『今までありがとう』と送られてきたそのメッセージが、終わりの言葉だと受け取った。
それ以来、私はそのメッセージに返信することもなく、一度も連絡をとらなかった。だから、心のどこかでずっと引っ掛かったままで....
祐一と付き合いながら、婚約までしながら、ずっと頭の片隅には彼の存在があった。だから、いつかハッキリさせなきゃとは思っていた。
私はそう思いながら、意を決して彼の方へと体を向ける。しかし、先に口を開いたのは成宮さんだった。
「今日来てくれたのは、ちゃんと別れるため?」
すると、全てを見透かしたような口調。そんな成宮さんに、私は驚きながらもゆっくりと頷いた。