愛を孕む~御曹司の迸る激情~
開放された扉の前。いつからかずっと待ってくれていた紗和ちゃんと、やっと顔を合わせた。
「ごめん、全然気づかなくて。」
「......蕪木さん、疲れた顔してます。」
一緒にランチにも出られず、顔を合わせたのは1週間ぶり。待ちくたびれたようにムッとした表情を見せる彼女は、そう言って俯いていた。
「新しいことばっかで、忙しかったからかな。」
「蕪木さん、ちょっと付き合ってください。」
すると、突然私の腕を取り、ギュッとしがみつくようにくっついてきた紗和ちゃん。
「え?」
「飲みにいきますよ!」
そして、半ば強制的に連行。駅からも会社からも離れた、ある大衆居酒屋へと連れて行かれた。
「あー、きたきた!遅いよー。」
店内に入ると、なぜか先に待っていたひな子が声を上げる。そのひな子の向かい側には、ひらひらと手を振る南も座っていた。
「なるほどねー、ひな子が仕組んだか。」
私はニヤリとそう言って、彼女たちが座るテーブル席へと座った。
「なー!人聞き悪い。紗和ちゃん、詩音のこと凄い心配してたんだもん。かわいそうじゃん。」
ひな子はすでにビール片手に始めていて、普段に輪をかけてテンションが高くなっていた。