愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「私、就活全滅だったし。やりたいこともなかったから、なんとなく端から受けてみて。そんで唯一受かったのが、なぜか大手の今の会社。ラッキーって感じで決めちゃったの。」
私はそんなひな子から元気をもらえた気がして、顔がだんだんと綻んだ。
すると、今度は南が口を開いた。
「じゃあ私も。ここに入ったのは、一番最初に内定がもらえたから。大手で、給料が良くて、休みがもらえるところ。ただそこに絞って探してたから、どこでも良かったんだ。」
指をおりながらそう言って、ニコッと微笑む彼女に、私はまた笑顔になった。
「ほらー!あの南でさえ、そんな理由だよ。詩音が一番ちゃんと考えてるじゃん。」
そして、そんなひな子の言葉に私は励まされた。
「ありがとう、二人とも。」
私がそう言うと、すました表情で目を逸らす二人に、思わず吹き出すように笑った。私の行動を意味のあるもののように言ってくれて、なんだか気持ちが軽くなった気がした。
すると、そんな私たちを見て、ドンッとテーブルに手をついた紗和ちゃん。
「いーーーなあーーーー。」
気づかぬうちに日本酒を飲んでいて、思わず私は二度見した。
「紗和ちゃん??」
「私もそんな同期が欲しかったですー!!仲良すぎだし、ずるいですよー。」
そして一人でそう言って、お猪口片手に日本酒をぐいぐい飲んでいる。