愛を孕む~御曹司の迸る激情~
_秘めた想い * 律side
須崎 律、25歳。都内の某大学を出て今の会社に入社し、4年目になる。そして今日も、いつものようにパソコンに向かっていた。
「須崎くん。」
すると、後ろから女の声がして、パッと振り返った。
見るとそこには、さらさらとした黒髪を垂らし、首を傾けにっこりと微笑む整った顔があった。
「これ、FAX届いてた。」
「おお、さんきゅっ。」
同じ課の同期、藤野 南だった。差し出された一枚の紙を受け取りながら、笑顔に一瞬ドキッとさせられた。
そして、その笑顔を見ながら、ふと昔のことを思い出した。
藤野の、無口で無表情なクールビューティー時代。美人で凛としていて、どこか人を寄せ付けないオーラを放ち、高嶺の花的存在。
同期とも馴れ合おうとせず、いつも一人だった。研修で集まっても、窓際で離れて座り、携帯をいじっているような子。そんな藤野を変えたのは、蕪木だった。
話しかけづらく、誰も近づくことができなかった藤野に、いとも簡単に声をかけ同期の輪の中に入れた。蕪木の、藤野とは対照的な性格が、壁を感じさせなかったのかもしれない。
常に周りに人がいるような明るい性格が、藤野を変えた。彼女の笑顔が増えたように思えた。