愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「なに??」
ボーッとそんなことを考えながら藤野を見つめていると、彼女は不思議そうにこちらを見た。俺は、昔の藤野を思い出していたなんて恥ずかしいことは言えず、思わず「いや?」と誤魔化した。
すると、藤野はおもむろにこちらへ歩み寄り、意味ありげに隣のデスクに寄り掛かる。
俺はクルッと椅子を回し、彼女に体を向けた。
「須崎くん、大丈夫?」
その瞬間、唐突にそう聞かれ、驚いた。
「なにが?」
意味が分からず半笑いで聞き返すと、藤野は言いずらそうに俯く。そして持っていたファイルをギュッと抱きしめる姿を見たら、なんとなく察しがついた。
「ああ....。」
俺はそう声をもらすと、なんとなく気まずくなり、またパソコンの方へ体を戻した。
「ごめん、余計なお世話だったね。」
空気を察したのか、答える前にそんな寂しそうな声が聞こえた。そうして、そのまま立ち去ろうとする彼女。俺は、思わず勢いよく立ち上がった。
「藤野、なんかおごる。」
そして勢いのまま、俺は彼女を引き止めていた。