[短編]砂糖彼氏と塩彼女
「そっか……。おまたせ」
「大丈夫だよ。行こうか」
不安そうな面持ちの紗羅の手をそっと握り、僕の家へ向かった。
「お邪魔します……」
駅からの間、紗羅とはまともに話さなかった。
話しかけても「うん」くらい。
いつもだったら当たり前だけど、今日は声のトーンが低かった。
塩じゃなくて、単純に暗い感じ。
やっぱり待っている間に、向井さんと話していたのが嫌だったのだろうか。
「紗羅。ごめん」
リビングのソファに座る彼女の正面にしゃがみ、目線を合わせる。
「……なにが」
「紗羅がいない間に僕が話してたから、不安にさせた」
「………」