死んでもあなたに愛されたい
そんな声で、そんなふうに聞かれたら、拒否できるわけがない。
あたしはやっぱり従順な猫みたい。
にゃーん、って、簡単に鳴いてしまう。
「……目、が……」
「め?」
「あたしの目……ふつうじゃ、ない、から……」
そもそも、ふつうなところなんて、そうそうないんだけれど。
ふつうじゃないと一番わかりやすいのは、この目だ。
これまで散々、気味わるがられてきた。
他人とはあまり目を合わせないようにしていた。
前髪を長く伸ばして、目を隠した。
あたし自身を守るため?
否。
他人が、これ以上、怖がらないために。
「……手、どかすぞ」
「へ!?」
いきなり彼の手が、あたしの手をつかんだ。
手を握ってることによろこぶべき!?
手をどかされたことにおどろくべき!?
一瞬にしてガードが崩れ、残りひとつとなった前髪という名の壁も、あっけなく太い指先によってよけられてしまった。
ひさしぶりに視界が開ける。
「……なんだ」
まっすぐな目に、あたしが明瞭に映っていた。
でも、
「きれいじゃねぇか」
そこに、あたしの瞳の色は映らない。