死んでもあなたに愛されたい
あの腕キス事件以降。
魁運からのスキンシップが明らかに増えた。
ことあるごとに身を寄せ、ためらいなく触れ、粘着力高くひっついてくる。
甘い。とにかくでろでろに甘い。
もはや初夜を越えた新婚のようなものでは!?
……ちがいますよね、ええ、わかってます。言ってみただけです。
「ひとみ? どうした?」
右耳に吐息がかかる。
すぐ横から覗き込んでくる、端整な顔。
ちっっか!!
え、ちょ、近すぎん?
毛穴まで見えちゃうよ!? それは困る。寝起きはぶさいくなのに!
急いで、手で壁をつくる。
髪をとかすふりをして、顔横からのアングルをごまかした。
「え、えっとお……その……お、おそろいの髪色いいよね。仲良しみたいで。あたしも今日はヘアアレンジ変えてみようかなあ、なんて。アハハ」
「…………」
「……か、魁運? ね、寝ちゃった?」
「腕」
「?」
「腕の痕、うすくなってきたな」
あぁ、言われてみれば。
あれだけ赤と青がみだりに咲いていた肌は、ほとんどシラフに返り咲いていた。
ケガが治ってきたのはよかった、けど……。
魁運のつけてくれた痕まで散ってしまったのは切ない。
「また、つけてくれる?」
「え」
「……な、なんちゃって~」
お願い、引かないで!
試しに言ってみただけ! ちょっとした出来心で!
赤面するあたしの手の甲に、ふ、と魁運の唇がかすれた。
「痛がんなよ?」
「え、わ、……ふぁい」
「……フッ。冗談だ」
鼻血もんだこりゃ。
いわば神様のたわむれ。
いっそ首輪でもなんでもつけて、一生あたしで遊んでいて。