死んでもあなたに愛されたい






大盛況の秋祭り。


授与所と仮設テントの休憩所のお手伝い、そしてお客さんのおもてなしで大忙しだけれど、待ちに待ったお祭りごとに心がおどる。



前髪多めのポニーテールの巫女姿で、あちこち動き回っていると。

おじ様に本殿のほうに呼ばれ、来てみたら。




「ひぃちゃん! すてき! 似合ってる!」


「そ、それは、あたしのセリフだよ」




華やかに着飾るつぅちゃんが、待っていた。

その近くには、和装姿の赤羽くんを付き従えている。




「それが舞の衣装?」


「うん! どうかな?」


「すごくきれい!」


「ほんと!? 照れるなあ」




あたしが着ているのは、赤と白で整えた巫女装束。


それとはちがって。

つぅちゃんの衣装は、まるで十二ひとえのよう。


平安時代をほうふつとさせるメイクも相まって、あでやかで、清らか。



あたしの片割れのはずなのに、あたしの知らない別人と対峙している気分だ。




「カイウンさんは今日はいないの? 彼にも感想を聞きたかったんだけど」


「魁運ならここに」


「えっ! わあ! 本当にカイウンさん!?」




あたしのうしろにずっといたよ。

淡い灰色の髪に、黒縁メガネをかけた魁運が。



雰囲気ががらっと変わったよね。

おどろくのも無理はない。


お客さんも死神だと一切疑わずにフランクに接していた。

中にはクラスメイトもいたっけ。



案外、気づかないもんなんだなあ。


もちろんあたしは、どんな姿だろうとすぐに気づくけどね! 愛の力は偉大なのだ!


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