死んでもあなたに愛されたい
心の中で浮かれきっているとも知らず、彼は真剣な面持ちでおでこの傷口を消毒してくれた。
コットンが赤色を吸収していく。
「……あたし、家出してきたんです」
どう思われるかな。
幻滅される?
もうやさしくしてくれないかも。
それでも言わなければいけない。
だって、あたし。
これからもあなたと関わっていたい。
「ずっとあの親の元にいたら、窒息しちゃうと思って」
「…………」
「逃げる機会を待ってたんです」
「……それが今日だったのか」
想像していたより、彼は静かだった。
もっと、こう……
親がいるから生活できるんだろ、とか
親も心配してるだろうしすぐ帰ったほうがいい、とか
きれいごとを言われる覚悟をしていた。
……ちがうんだね。
彼には、ちゃんと、あたしの思いが届いていた。
「……家族にもいろいろあるしな」
理解力と共感力、どこでカンストさせてきたんですか。最強じゃないですか。
あなたみたいな旦那さんが欲しい。
いいや、むしろ、あなたが欲しい。
「あの!」
「?」
「失礼を承知で頼みます! もしよろしければ、ここに身を置かせていただけないでしょうか!?」