死んでもあなたに愛されたい
「どんな舞を披露するの?」
「扇を使っておどるんだよ」
見せてくれたその扇は、光沢感のあるデザイン。
あしらわれた、花や榊。
持ち手のところには、長めの赤い紐でつくられたリボン。
おどるときに映えそうだ。
「こっちの鈴と迷ったんだけど、わたしには扇が合ってるってお母様に言われて」
「そうだったんだ。鈴もいいと思うけど」
「今日の舞ではね、わたしのオリジナルアイデアで、このヴェールの演出もしようと思ってたの。だけど、お母様たちから伝統が大事だって反対されちゃって。それもあって、全体的に見たときに、扇が最適かなって」
大きめのカバンに入っていた、大きな鈴と薄紅色のヴェールを眺めながら、つぅちゃんは力なく眉を下げた。
あたしだったら、自分のやりたいことを優先させちゃいそう。
実際、してるし。
でもつぅちゃんは、みんなのしてほしいことを一番に考えるんだね。
その話を聞くと、がんばれ!って応援したくなる。
「あたしには詳しいことはわからないけど、どんな演出であれ、主役はつぅちゃんだよ」
「主役っておおげさな」
「いわばつぅちゃんのオンステージだよ? そのほかはぜんぶ、つぅちゃんを最高に仕立て上げる、ただの武器。何をどう使おうと、つぅちゃんが最大限に活きれば問題なし!」
ぎゅぎゅぎゅっと、明るい茶色の髪をまとめた。
きつくした結び目に、花かんざしをさす。
最後に額に、前天冠と呼ばれる装飾を乗せる。
「ありがとう、ひぃちゃん! わたし、主役になってくる!」
うむ! いい仕事した、あたし!
……って、ライバルをもっとかわいくしてどうする!
魁運が見惚れちゃうかも。
つらい! メンタルが持たん!
でも、まあ……今回は、しょうがないね。
なんたって、妹の主役の日。
ライバルの生き様を見届けるのも大切だ!