死んでもあなたに愛されたい






空が暗くなってきた。

ぼんぼりの明かりに照らされる。



拝殿前に特別に設けられた、正方形の舞台。

その周りに、屋台もそっちのけで大勢の人が集まっていた。


最前列には、魁運とマユちゃん先輩の姿も。




「ひとみ、こっちだ」


「場所とっといてくれてありがと」


「わたしたちも楽しみにしていたのよ」




ほかの神亀メンバーは、花より団子。

まだ屋台にたむろしているらしい。




「ひとみんの妹ちゃんが舞台に立つのよね?」


「そうだよ! ……あっ、来た!」




――シャン、シャン。



甲高い鈴の音に、辺りは静まり返る。

舞台を囲うように炎が点火された。



光を浴び、つぅちゃんの像があらわになる。



拝殿に向かって礼をとり、舞台上に立った。

わたしたちにもあいさつ代わりの礼をする。



前天冠を飾るゴールドの金属が、ゆらりゆらり、揺らめく。


閉ざされた扇を、両手で天高く掲げた。




「……始まる」




誰かが息をのんだ。

それを皮切りに、和楽器が奏で出す。



琴の音色に沿って、つぅちゃんの腕がなだらかに下がっていった。


顔の前で止まると、扇が鮮やかに開かれる。


扇の絵柄を見せつけるようにゆっくり前へ出し、長くたれる装飾品の数々ごと、優雅に身を回した。


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